
96年1〜6月
あーちゃんは、いつもロージーを目で追っている。よほど興味があるらしい。ロージーはと言えば、このわけのわからない生物が不気味でしかたなかったのだろう。近づこうとしない。ジュピターは、相変わらずだ。あーちゃんを見せる度に、前足でもっとこっちに寄せろと言う。舐めたくて仕方ないらしい。それなのに、あーちゃんはジュピターにはロージーほど興味を示さない。
あーちゃんが生後5ヶ月になった頃だろうか、よくブーッと、口で音をたてる。ロージーの別名は「ぶー」或いは「ぶーちゃん」だった。当時はまさか、ロージのことではなかったのだと思ったが、一日中「ブーッ」を繰り返している日もあった。その後片言の言葉が出るようになっても、ロージーのことは、同様に「ブー」と呼んでいたところをみると、やはりあの「ブー」は、ぶーちゃん、つまりロージーのことだったのだろう・・・!?
ロージーはというと、たまにあーちゃんのところに近寄ってクンクンしているものの、それ以上何かするでもなしに、その場を離れるといった毎日。
ジュピターのほうも相変わらず、あーちゃんを見せると片足を犬舎から出してこっちによせろポーズをとっていた。たまにジュピターに近づけるとペロペロしてくれるのだが、あまりうれしそうではない表情だった。
家にある、あーちゃんの生後7〜8ヶ月の日記に、嫌いなものに動いてワンワンいう犬の人形とあるが、ロージーのことは大好きと書いてあるから子供の心理はよくわからない!?
96年7〜12月
相変わらず、ロージーのことが大好きなあーちゃんだったが、はいはいしているうちは、とりあえず部屋を分けていたものの(あーちゃんは和室、ロージーはそれ以外の場所)歩けるようになってくると、だんだんそうもいかなくなってくるのは当然で、少しずつあーちゃんとロージーは同じ部屋で過ごすこととなる。
初めてふたりを同じ部屋にした時、あーちゃんが一目散にロージーのほうに近づいたものだから、ロージーは大慌て!とは言っても逃げるロージーに追いつくほどあーちゃんの足は早くない。そんなわけで、ほとんど触れず仕舞いだったのだが、あーちゃんにとっては、ずいぶん楽しかったようだ。その後も、同じことの繰り返しの毎日だったが、あーちゃんにとっては一日のうちで、この時間が一番楽しかったようだ。
とうとう運命の日?がやってきた。あーちゃんもだいぶ歩けるようになっていたし、年末だったということもあり、夜は、あーちゃんもロージーも一緒の部屋で過ごすこととなる。毎度の如くロージーは不気味な生物とは係わりあいたくないらしく、あーちゃんが近寄ってくると、それでもなんとなく相手をしてくれるようにはなっていたものの、さりげなくその場を逃げるを繰り返す。あーちゃんはとにかくしつこい性格だ。しかも今夜はいつまでたってもあーちゃんは同じ部屋にいる。1時間、2時間と時間が過ぎた。その間、何度となくあーちゃんを別の遊びに誘いロージーを解放?してあげようとしたが、しばらくするとまたすぐにロージーに近づく。だんだんロージーがわたし達のところに助けを求めに来る回数が増えてきた。夫がふたり?の間に入り相手をしていたが、TVに夢中になったほんのわずかな時間に事件が起こった。あーちゃんがたまたま家具等で逃げ場のないところにロージーを追い詰めてしまっていた。逃げ場を失ったロージーは恐怖のあまり、威嚇をしたのだが、その牙があーちゃんの手に歯跡を残した。
大した傷でもなく、よかったのだが、あーちゃんの心に溝ができてしまうのではないかと心配が大きかった。
ロージーは子犬の頃から人の着ている長袖の袖口をハグハグする、ヒラヒラしたスカートでロージーの前を通ると裾を追いかける癖があった。叱るとやめてくれるが、この癖?はいくつになっても続いた。その後もそうなのだが、ロージーが威嚇してあーちゃんの手を傷つける時は、必ず袖口近く。半袖だと、ひじのあたり、長袖だと手首、指だった。勝手な推測だが、ロージーも手指を噛もうとしていたわけではなく、やめなさい!の意味での威嚇の時は袖を引っ張ろうとしていたけれど、あーちゃんがびっくりして手を動かしてしまう事で手指に犬歯が当たってしまっていたのかな?と思ってしまうが、親バカな考えだとお叱りの意見を頂いてしまうだろうか。いつもわたし達のちょっとした不注意で起きていた事件だったので、一番悪いのはわたしたちだったのは言うまでもないが。
この件は子供と犬を一緒に育てる一番難しいところに感じた。常に親が見ているというのは無理がある。かと言って、それぞれを別の部屋に、というのもこの時期になると難しい。言葉のわからないあーちゃんにどのようにして犬と人が生活する中でのルールを教えたらよいのか。犬にもよるのかもしれないが、これには、当時、相当頭を抱えた。
