佐藤俊之師 略歴

第24回学生能楽鑑賞会主催公演(2001.10.2.)は、奈良から金春流若手のホープ、佐藤俊之師をお招きし、大曲「道成寺」初挑戦(しかも「斜入」というアクロバティックな鐘入りによる)を主催させて頂き、お蔭様で大成功を収める事が出来ました。「佐藤師のプロフィールを紹介して下さい!」というリクエストにお答えして、このコーナーを作りました。

 

佐藤俊之師
佐藤俊之(さとう としゆき)


金春流シテ方能楽師。
昭和35年、山形県鶴岡市市生れ。
早稲田大学金春会に入会、本田光洋、吉場廣明に師事。
能面師・橋岡一路の薫陶を受ける。
大学卒業後、奈良の金春晃實に師事し、住み込みの内弟子として修行、8年後に独立。
「海人」で初シテを勤め、以後「獅子」「乱」「翁」「道成寺」を披く。
現在、京都府木津町在住。
最近の演能は、2000年10月「邯鄲」、2001年6月「絃上」、10月「道成寺」など。


今回の「道成寺」初挑戦に先立ち、雑誌「金春月報」9月号に掲載された「佐藤俊之師インタビュー」を転載、お目にかけさせて頂きます。

 

「道成寺」に挑む

大学卒業後、金春晃實師のもとに入門。厳しい修行を経て、このたび「道成寺」を披かれることになった佐藤俊之師に今の心境などを聞いてみました。
───今回「道成寺」の話が来た時の最初の感想は?
佐藤 今回の主催者(学生能楽鑑賞会)の中に大学の先輩がいて、その方が奈良金春会の「邯鄲」(昨年十月)を観にいらして、「飛び込み」をほめて下さったんです。その時は全然そういう話はなかったんですが、その後で突然「道成寺」を舞ってみないかと言われて。その時はお許しが出るかどうかわからなかったので、どうなるかなぁと思ったのが正直な感想です。でも晃實先生に、そういう話があるのなら大事にしなさいと言われて、舞わせて頂くことになりました。
───どのような「道成寺」にしたいと思いますか?
佐藤 晃實先生には「道成寺」だからといって気負いすぎないよう、特別なことと思わないようにと何度も言われています。ただ稽古していて、乱拍子とか舞うための体ができていないなぁと思うんです。馴れがないというか。だからまず体を作らないといけないと思います。
───稽古して苦心する所はありますか?
佐藤 強くしなくてはいけないんだけど乱暴になってはいけないとか、丁寧にしなくてはいけないんだけど力が抜けてはいけないという所がたくさんあります。あと白拍子の要素と蛇の要素、どちらが突出してもいけないと思うんです。それから謡で和吟から強吟に変わるような所がとってつけたようにならないように、自然に謡う所が難しいですね。
───鐘入りについては?
佐藤 主催者の希望で「斜入」でやることになったんですが、本田(光洋)先生に鐘後見をお願いして。鐘入りに関しては本田先生に教わるところが大きいですね。「斜入」というのは蛇が体をうねらせるところからできた型だと思うんですが、そんなことより無事に入れるかが問題で(笑)、入れたらいいなと。
───乱拍子については?
佐藤 とにかく成田(達志)さんの気合がすごくて、こちらからそうしなくても鼓のほうからのせていってくれるんです。やっているとしんどくなってくるんだけど、精神的な心地良さを与えてくれるんで感謝しています。
───これからどのような能楽師になっていきたいですか?
佐藤 できないことや知らないことが多くてまだ中に入れず門の前でうろちょろしている感じなんで、早く入門したいなと(笑)。学生の時に観た能で、まるで催眠術にかかったみたいにシテの姿だけが輝くように浮かびあがって見えてずっと目が離せない、そんな経験をしたんです。見終わったらもうへとへとで家まではって帰るような。そこまで集中させる能だったんです。能というのは他の芸術が到達できないようなことをやる可能性があると思うんです。だから自分も今まで能をやってきたんです。これからもそういう感覚を忘れないようにしたいと思っています。
(七月十四日 岡山・後楽園にて)


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